メモリーズ
アラガイs


アメリカ大陸を横断したいと言っていた
いまは富士の湖畔で眠っている 。
北西沿岸に辿りついたのは夢のなか
小さなトーテムポールを捧げよう 。
ピカピカに磨いたローズウッドのハンドルを握りしめ、真っ白なキャデラックで国道をぶっ飛ばす
土埃をあげながら怪鳥は雄叫びのボリュームをさらにあげる
土産は青いターコイズの指輪でいいだろう
―そんな気ままな一人旅も―
」グランドキャニオンのてっぺんに登ると
「世界の始まりに足が震えちまうのさ
」チーフを巻いたテンガロンが風に拐われてゆく―
―西へ広がる太平洋の豪波はまだ遠い
‥クリントイーストウッドの看板を見つけたら、マリリンと記念写真を撮って送ってほしいな
曲線は逆立つ荒馬のように、険しくて硬い引き金
砂に紛れる蒼い星屑の夜
きっとアパッチ族の奇襲にも遭遇するだろう
鉛で改造したお手製のピストル
試しにコインを撃ち抜いたら忘れるなよ
‥そして疲れた腕と車を岸に捨て去り
翔ぶように砂浜を走ればいい。

白い息は熱く坂路を溶かす
富士湖畔には骨と伝わる柱が立ったまま
箱根路を下る足跡が刻まれている
あの日輝いたきみはいまもトーテムポールを握りしめたまま
アメリカ大陸の北西沿岸をひたすら目指している 。









自由詩 メモリーズ Copyright アラガイs 2011-06-22 03:08:46
notebook Home 戻る