隣の雨
電灯虫

差していたビニール傘には
雨が滴となって付いていて
細く包めるときに
水となって手に拡がり付いた。
とりあえずズボンの生地で拭ったら
沁み跡として残った。
湿気を帯びた空気の中
黒髪で太目の髪も重くて
みんなも湿気に引っ張られて
交わす「おはよう」もしっとり濡れてる。


黒板に文字が書かれる音と
外で降る 連続した雨音は
強調される室内の蛍光灯に照らされ
特別に決められた授業から
現実感を取り戻す。
席替えで獲得した窓際の席だから
開いてダイレクトな窓の外から
ふっと伝える 雨のひんやりは
湿気を押しのけ 涼しさだけ残す。
雨の日にベランダのドアにもたれて
絵本や漫画を読むのが好きなのは
背中に感じる冷たさと
耳で拾う雨脚が暮れる
一休みの静けさだったんだ
と 気付く。
運動場に置かれた水溜りの上で 
跳ねる水紋は 雨脚の程度が
小雨から中雨へと変化するのを教える。
強くなった雨の向こうでは
起きる出来事が覆い隠されていく。
秘密を増してく雨の中
休み時間間際に当てられた
タイミングの悪さに嘆きつつ
隣の雨に乗せて 
涼しさを添え 跳ねるように
真っ直ぐと答える。


自由詩 隣の雨 Copyright 電灯虫 2011-06-19 16:30:27
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