最愛
yumekyo

賑やかな桟敷から
夜の鴨川に淡い光が落ちていた
しっかりと握っていたあなたの腕には
かすかな傷跡があった
生まれ故郷の北陸の古都から 
ひとりで背負ってきたものだった
一緒に背負うと
決めたものだった

話を聞こうとすれば
あなたは急いで
何もかもひとりで背負い込もうとする
今はあなたの隣の人と
委細構わずShareすればいい
そのうちにあなたの決めたことの
一応の総括が出来る日が
朝の光とともに
突然にやってくるから
きっと

あなたの街も
梅雨の晴れ間で
同じ月が
見えているだろう
あなたの隣の人が
どうしてもいやになったら
いつでも帰ってくればいいよ
それが善か悪かは
今 あなたの植えた木の苗が
木といえるほどに
伸びた頃に
はじめてわかるだろう

強い女(ひと)だと
決め込まないで
大人の女(ひと)だと
あきらめないで
後悔というのは
酷く潜伏期間が長くて
不意打ちにあえば
あなたはうずくまるしかない

けれど 
僕が何を言ったところで
あなたは隣に居る人を心から愛しているから
二度と離れることは出来ないだろう
だからせめて
あなたの場所から
僕をながめていてよ
そして時々
あざけってくれ
僕はしばらく
強がっているよ
まっすぐひとり
歩いていくよ


自由詩 最愛 Copyright yumekyo 2011-06-13 23:42:41
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