Long Shot
ホロウ・シカエルボク
夕暮れの名残を街の灯りが飲みこんで
一斉に路面を照らすヘッドライトは起床の景色を思わせる
これから、のひとたちがにわかに活気づいて
ここまで、のひとたちがアイフォンを眺めながらバスを待っている
ひととひとがまるでちがう風景を選びながら
ときおり遠くを見やる目にたいした違いはなく
そう、オリコン・チャートに涙出来る日常とでも言うのか、そんなものを
垣間見せながらさまざまな動力でここを通過してゆく
アスピリン詰め込んだ胃の中はブルー
暖かいと目論んだ薄着はわずかに見当違いで
ときどきふるえながらだけどどこにも帰りたくはなかった
あたたかなコーヒーでそれはごまかせる程度だった
ふと、そう、ときどき
おれは画鋲なのだと、そう思うことがある
いつ押し込まれたのかある地点で
両足を埋めて直立している画鋲なのだと
ポイントされた理由は思い出せない
いつか、だれかが、なんらかの目的でもって
おれを使ってそこをポイントしたのだ
おれ自身にこころ当たりがない以上
だれかの所為だと思うしかないじゃないか
二時間が過ぎて
すっかり暗くなったころ
おれはその理由に気付いた
「ここから撮影してください」
マーキングされたそこから眺めるスクランブルは
巨大なカレイドスコープのようにせわしなく回転していた