Long Shot
ホロウ・シカエルボク



夕暮れの名残を街の灯りが飲みこんで
一斉に路面を照らすヘッドライトは起床の景色を思わせる
これから、のひとたちがにわかに活気づいて
ここまで、のひとたちがアイフォンを眺めながらバスを待っている
ひととひとがまるでちがう風景を選びながら
ときおり遠くを見やる目にたいした違いはなく
そう、オリコン・チャートに涙出来る日常とでも言うのか、そんなものを
垣間見せながらさまざまな動力でここを通過してゆく


アスピリン詰め込んだ胃の中はブルー
暖かいと目論んだ薄着はわずかに見当違いで
ときどきふるえながらだけどどこにも帰りたくはなかった
あたたかなコーヒーでそれはごまかせる程度だった
ふと、そう、ときどき
おれは画鋲なのだと、そう思うことがある
いつ押し込まれたのかある地点で
両足を埋めて直立している画鋲なのだと


ポイントされた理由は思い出せない
いつか、だれかが、なんらかの目的でもって
おれを使ってそこをポイントしたのだ
おれ自身にこころ当たりがない以上
だれかの所為だと思うしかないじゃないか




二時間が過ぎて
すっかり暗くなったころ
おれはその理由に気付いた
「ここから撮影してください」
マーキングされたそこから眺めるスクランブルは
巨大なカレイドスコープのようにせわしなく回転していた




自由詩 Long Shot Copyright ホロウ・シカエルボク 2011-06-04 02:39:10
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