城址公園の傍らの川沿いの道は通学路なのだった
石川敬大




 この先は川でいきどまりのはずなのに…


 帰ってゆくオランウータン
 帰ってゆくパンダコパンダ
 帰ってゆくオットセイ
 帰ってゆくコアラ
 じてんしゃにのって
 はたまた喋り語らいあってテクテクテク帰ってゆく


 川魚しか棲んでいない川だけしかないはずなのに…


 背中をみせてさってゆくひともいる
 買物帰り
 デコパンダタレパンダ
 帰宅する主婦の後姿がしぐれてゆくか
 ゆう、グレテゆくか
 肩さきに触れんばかりの竹藪の竹の枝先が
 しなだれかかっている道の先は
 きっぱりと直角に折れて山折り谷折り?
 とにかく視界から消えている


  ぼくの傍らにいるひともやがていなくなるのだろう
  このただ一度きりしか会わない帰宅者の群れと同じに
  …そのことに思い至るととてもさびしく感じたりして


 ほらほらそこから、また帰ってゆく
 じてんしゃにのって
 奇妙なはやあしのいきもののひとりになって
 チンパンジー
 ウサギサル
 ネコイヌ
 キジや
 スピッツの声なんかもして
 サングラスをかけたフラミンゴ



 でも
 〈うかつ〉なのだろうと、おもう
 ぼくの〈うかつ〉のその〈うかつ〉
 から
 タイヤ/車軸/サドル/ハンドル/
 オカッパ頭のブタ
 カバンを襷がけしたカッパ
 背中にしたヤギ/荷台のカバンが殿様ガエルだったりして

 この先には川、川魚、ぼくの〈うかつ〉があってね
 それで道は
 いきものたちで賑わうんだ






自由詩 城址公園の傍らの川沿いの道は通学路なのだった Copyright 石川敬大 2011-06-02 21:27:15
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