天国へのエスカレーター
北大路京介
『おや 気がつかれましたか。』
「はぁ。」
『まだ眠っててもかまいませんよ。』
「はぁ ん〜 とても長いエスカレーターですね。 」
『そうですね。』
「先が見えない。 こんな長いエスカレーター初めて見ます。」
『そうでしょうね。』
「ここは、どこなのですか?」
『あの世に続くエスカレーターです。』
「はぁ。 あの世ですか。 あ、あの世? えっ あの世?」
『そうです。 あの世。』
「あちゃー 死んでしまいましたか、わたし。」
『覚えてないのですか?』
「んー トラックに はねられそうになったところまでは覚えてるんですけど。」
『はねられたんですよ。』
「そっかー。 あぁ、やっぱり はねられたかぁ。」
『ドーンって。。。』
「ドーンの間、全然覚えてないです。」
『そういうものなのでしょうね。』
「はぁ。 ところで、このエスカレーターを逆走したらどうなるんですか?」
『生き返れますよ。 まだ身体は、意識不明の重体で生きてますから。』
「ホントに? じゃぁ、がんばって走ってみます!」
『けっこうスピード速いでしょ。 戻りきるのは大変ですよ。』
「降りても降りても、前に進めない。 はぁ はぁ はぁ 。」
『なにか やり残したことがあるんですか?』
「どうしても。 どうしても最終回まで読みたいマンガが。。。」
『むこうでもマンガ読めますよ。』
彼は 逆走をやめた。