あまみずの 水化粧
村上 和

遙か遠い昔から
聞こえてくる音色がある




 *


四十五億年を眺める
不確かな追憶
だから君はちっぽけなんだ
とは言わず
だから君の存在が大事なんだ
と云う
大地を形造る
果てしない月日と一雫の
始まりを想う




 *


レット・イット・ビーが流れる中

人類が繰り返した過ちの
白黒の映像が点滅している
外は雨だからと
神の御前でボクは
おもちゃの戦闘機を飛ばす

遙か遠い昔から聞こえてくる音色がある




 *


いつか雨は止むから
そのときは
ビルも町も駅も廃虚も空地も
森も川も海も山も湖も
優しさも罪も欲も温もりも涙も
全てを白く染めて
世界は君が思うより素敵だと
笑って欲しい




 *


色褪せた記憶
少年の眼は
すれ違う舞妓に釘付け
橋を渡る和傘
人気のない町並み
軒先に
石畳の路に
雨音




 *


遙か遠い昔から聞こえてくる音色がある
他愛ない悲しみが多く
そしてとてもささやかな
幾つもの物語を繋いでいつか
ボクが大きくなったらと笑う君に届く




 *


四十五億の時をかけて色づいた
極彩色の色とりどりを
撒き散らして乱反射するほしの詩

あの花は
あの生命は
あと何度咲くのでしょう

遙か遠い未来から聞こえてくる音色がある
もう存在しない私の手をとって

(僕が君の救いなら、君も僕にとっての救い。)

囁くように
千年未来の雨に宿る言葉を聴かせて




自由詩 あまみずの 水化粧 Copyright 村上 和 2011-05-31 06:36:02
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