、(むし)
乾 加津也

わたしたちより古株で
わたしたちより広い範囲に
(未知種)として一括りされる
名もない虫がいまもずいぶんと生き抜いている
らしい



Gという
まことに理論的な空間で
アドレス武装のわたしたちは
あらゆるものが
あ、ドレス仕様、なので
もはやどこにも
メートル法学会における余白はなく
聴かれない懺悔(なみだ)もなく
駆けこむべき非常灯もなく
白痴美もなく
なくなく
なんとなく情緒不安定なかんじで
身の丈くらいの
容量不足にほら
とっぷりと明け暮れようとしている

これからの会議なら
つば撒き散らす根回しのない本音などなく
葉緑素で
こころが揺れるという空気をちょこっとつくりだして
クリックして



 マジ最悪という豊かな世代に
 なめらかな卵を産みつけたモンシロチョウは
 キャベツ畑でひらひらと幻視を舞っている
 一オクターブ範囲の
 アオムシたちの饗宴に酔い惑う



取り急ぎ身のまわりのアドレスを無闇にかきこんで
一枚の風呂敷で覆うようにして愛でくるめば
中から
「アディオス!」の正しい発音が
威勢よくわたしたちの鼓膜を震わせるだろうか


自由詩 、(むし) Copyright 乾 加津也 2011-05-30 17:43:49
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