追悼
はるな


(覚えていること)

くせ毛、喘息持ちの喫煙者で、裾のよごれた(でも長年きちんと手入れのされた)ジーンズ。カメラ、6×6、すこし背中を丸めて歩くくせ。犬のような、かんじ。

ベンチ、チャイム、ロッカールーム。スニーカー、薬品のにおい。
あたたかな写真。女の子たちの。スクエアに収まる、その空気と。

もう無い。

(並べなかった葬列に)

黙祷は昼の空に。台風は真上、風はごうごう。いつもとちがう銘柄の煙草と。
私は今日も笑った。食事も排泄も、滞りなく。性交も、睡眠も、すべて日曜日に則って。
あなたなら、今日はどんな写真を撮っただろうか。


(日々に)

書類に判をつくようにはゆかない多くのものごと。流れるような、流されるような。
あるいは大きなものに動かされるように。

夕方、キッチン、自転車のおと。あたらしい食器と、あたたかいお茶。
すこし伸びた爪と、髪の毛。



自由詩 追悼 Copyright はるな 2011-05-29 21:07:01
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