綺麗なプライベート・ビーチが欲しい
一 二

俺の目は
本物の海を写し出すことを
待ち焦がれている


ここから一番近い海に行ったとしよう

自分はここに
自然は向こうに
生憎その間に色んな障害がある

向こうから敢えて
俺のところに来るのは
牛革のような色をした海草と
魚の香水ばかり

その間を
衣をまとわぬ腹と尻が
縦横無尽に砂の中を
立ったり
寝転んだり
特に太った肌色の塊は
陸に上がったセイウチのよう

どっちを見ても目を背けたい
何にも見まいと目を堅く閉じる
だが、そうすると
余計、色々な物が見える
何かしなければと決心する

千の体を乗り越え夢中で
海辺に走り海に飛び込む

やっぱり、ここにも
おびただしい肌色の群れ
脂肪の浮き場
結局それから逃れられないのか

悄然と緑色の波に漂う自分
ああ海にはどこにも空席が無い
水平線も人で覆われている

かくては溺れるほかに道はない
そして石のように体を重くした

おもむろに
腹いっぱいに
水を飲む

海の底で一人ぼっち
ようやく静かになった


自由詩 綺麗なプライベート・ビーチが欲しい Copyright 一 二 2011-05-28 14:47:11
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