World Is Mine
ホロウ・シカエルボク
誰かが世界を斜に見て
誰かが世界を嘲笑ってる
俺は世界の国境を抜け
小高い丘からそれらを見てる
誰が世界を転がしてる
誰が世界を動かしてる
誰が世界を騒がせてる
誰が世界を壊そうとしてる
ポカーンとした目玉で眺めれば
どんな流れもいっしょくたに見えるものさ
君は河の流れを見つめながら
「ひとりひとりの力は小さいけれど」なんて
型にハマったことばかり言う
ひとりひとりが力を合わせることが出来るシステムなんて
人類創世からこれまでにほんとの意味であったことなどあるのかね?
ひとしきりギャングが暴れた後の騒然としたダイナーで
すかすかのトーストにバターをたっぷり塗ってもらっって
出がらしみたいなコーヒーで胃の底まで流しこむ
生きて行くことが出来るならどんなもんでも流しこむことさ
それを口に出来る隙を世界がこちらに与えてくれるなら
暑い地方で爆弾を抱えたテロリストが繁華街で点火しちゃったってさ
あたりは肉片だらけで男も女もありゃしないって
海外観光客も巻き込まれてえらい騒ぎになってるって
インターネットを使ってテロリストが発信した声明によるとこにゃ
「真の平和を取り戻すために我々は戦う」ときた
そのためには同じ血が果てしない肉片を拾っててもやむなしってことだ
誰かを諭したいわけじゃないぜ
誰かに判って欲しいわけでもない
誰かと論じ合いたいわけでもないし
誰かを組伏せたいわけでもない
そんなことには興味はないし
どんなふうにやりきったところでそんなことに意味なんかないし
ただ生きてることの隙間を埋めているのさ
欠けた壁にセメントを塗るみたいにね
生きてることには穴が開くものだ
そしてそれを埋めて回るのが人生なのさ
誰が世界を転がしてるんだ
世界なんか転がしたり出来るものじゃないんだぜ
薄暗いうちに粘ついたカウンターでその日最初の珈琲を飲み干す誰か
冷えたダイニングテーブルに置き手紙を残して小さなバッグを抱える誰か
混線気味の公衆電話に向かって必死でなにかを叫んでる誰か
日の当たらない路地裏から這い出してマッシュルームの空缶に小銭を乞う誰か
産婦人科の玄関ロビーでやつれた頬を涙で濡らしている誰か
ガソリンスタンドでひび割れた指先を汚して金持の車を洗ってる誰か
ファミリーレストランのキッチンで肉の焼ける匂いに吐気をもよおす誰か
昨夜の酒をこらえながら電動ノコギリの振動を力で抑え込んでる誰か
夜中じゅう誰かの欲望の相手をして芯までカラッカラになってる誰か
タクシーから降りてきてようやくの休みに伸びをするくたびれた背広の誰か
レディース・アンド・ジェントルメン、生きてることには穴が開くものだ
昨日知り合いの両手が後ろに回ったんだ、ドラッグをこっそり売ってたのがバレてさ
直前まで俺と電話で話してたんだぜ
最近抱いた売春婦のどうしようもないアレについてゲタゲタ笑いながら話してるところだった
なあ、だけどあいつ、結局のところ
どうしようもないアレよりずっとどうしようもないヤツだったってことさ
誰が世界を転がしてるんだ
あんたの知ってる世界なんかみんな幻想だぜ