河口
yuko

スカートを翻して
電車に乗る
制服はわたしを
嵌めこんではくれないし
だからってあなた
放してもくれない
目を伏せて箱の中
景色が流れていく

投げられたくしゃくしゃの
ルーズリーフに
書かれた文字列が
読めなくて
それが血だということも
傷口の場所も
よく
わからないのでした

目に見えないものは
どこにもないのだと知った
から黒板を白線で
裂いていく
指先とチョークが削れて
(海だ、)
あなたの視線は
わたしの
どこを見ているんですか

生まれたときの記憶が
ないからきっと本当は
途中から始まったのだと思っていました
ねじまげて
ねじまげられて
ふくらんだ両胸
三角州には
背の高い植物が
ぽつり
ぽつり
鳥たちの影が
羽ばたきだけ残して

迸る川を
受け/止める
のは
わたしのどこが適切ですか
麻痺していくので
舐めまわす
文字とあなたと
見えない傷口
化膿してぐずぐずの教室
ぬめる床
だれか雑巾を出してそれを
拭って
噛んでください

流れていく
ものに身を任せて
だくだくと
鳴る心音に
踏切が鳴るよ
いつだって求めていた
わたし
かさぶたを剥がしては
教室の窓に張りつけた
あなたの顔に
触れたことがない
ので
止まらない!
風がスカートを持ち上げて
ぽきんと
折れた


自由詩 河口 Copyright yuko 2011-05-24 12:54:41
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