たもつ


イエーイ! 家 
俺らのため息というため息 体毛という体毛 のすべて
には窓が取り付けられている 家
窓という窓には俺らの手形
という手形にも窓
ところどころは出窓として取り繕っております
イエーイ!

お涙頂戴 俺らが生きていくために必要な涙をくださいませんか
柱の一本一本 床板の一枚一枚が涙で出来ている
築ニ年の木造住宅なのです
通勤靴に踏まれながらも 靴下を履き続けようとする 家
バスの圧力に屈しそうになりながら なおもその存在 家
階段を降りる階段 クローゼットで待つクローゼット
家を出る家 家に入る家
イエーイ!

床屋のサインポールに朝から話しかけていたばあさん
見せたかった 家
ある日突然に星屑となった
きっと俺らはある日突然に家となる
もっと窓を作っておけば良かった
サインポールをたくさん用意しておけば良かった
抱きしめると 遺影 俺らの 遺影 俺らは 遺影
風と像の見分けがつかない

イエイ イエーイ! 家
足元に咲く花を見れば空の小ささが良くわかる
俺らはこんな小さいもののためには生きていけないねえ と 家
玄関に立ち止まれば向こう側でこっち側と鉢合わせをする 家
俺らが朝食の準備をしている間にも
今日という今日に窓を取り付けている家がある




自由詩Copyright たもつ 2004-11-10 16:54:51
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