名前のない鳥
花形新次
名前のない鳥が
薄曇りの空へ
飛んでいった
羽音をたてなかったのは、
よく通る声で鳴かなかったのは
そこにいることを
知られないため
太陽に向かわなかったのは
影を教えないため
知られなければ、
誰にも知られなければ
このまま
名前のない鳥でいられるから
名前を呼んでほしかったのは
遠い昔
まだ少しだけ
美しいところがあった
あのころ
「呼びとめられることはなかったよ」
今は
たった一人
空を飛びたい
そして風に溶けたい
そしてきれいに消えてしまいたい
自由詩
名前のない鳥
Copyright
花形新次
2011-05-20 18:31:59