朝帰り
はだいろ

土曜日、
彼女を連れて、落語会に行く。
昼夜ぶっつづけの会だったので、
初めて行くには、ちょっと、
ヘヴィだったかもしれないが、
まあ、
行きたいっていうんだから、
知ったことか。
と思って、
でも、
隣で、彼女のお腹がキュルキュルと鳴るので、
ハンバーガーふたつも食べたくせに、と、気になり、
やっぱり、
落語なんて、一人で聞くに限るにせよ、
想像力と集中力を要するので、
とても疲れたらしく、
その割に、
聞いた噺を覚えてないので、
ヒントを出し出し、
思い出させてあげる。
文左衛門とは、いつも相性がよく、
「子別れ」が聞けて、とても良かった。

それから、
彼女の部屋へ行った。
作ってもらって、
食べたもの。
土曜日、
キーマカレー。
日曜日の昼、
焼うどん。
日曜日の夜、
煮込みハンバーグ。
ぼくの好物を聞くので、
ぼくの好物を、
見よう見まねで作ってくれた。
そして、
みんな、
びっくりするくらい、
美味しかった。
だいたいが、
ちょっとお店で味見しただけで、
材料や調味料を当てるのだから、
元々、
絶対音感ならぬ、
絶対味覚のようなものを、持っているのかもしれない。
ぼくはわざとのように、ぐうたらに、
笑点なんかぼんやり見ながら、
彼女がトントンとお料理する音を、
聞いていた。

スーパーで、
ぼくが足を踏んでも謝らないので、
後から怒ってた。
部屋で、ぼくがバタバタと物を落っことして、
知らないうちに冷房のスイッチが入ってたので、
後から怒ってた。
でも、
美味しい美味しいと、
ぼくが彼女のぶんまで平らげると、
嬉しくてたまらないように、
ふんふんと歌いだした。

月曜日の朝、
有楽町線から山の手線に乗り換えて、
朝5時半に起きたのだけど、
いったん家に戻って、
仕事に出かけた。
もしも、
ひとりで過ごしたとしたら、
ひとりで過ごすのも悪くはない、いつものような、
週末だったことだろう。
だけど、
ぼくは、ひとりではなく、
ふたりで過ごす週末というものを、
ぼくの人生の一部分を使って、
体験してみました。
比較できるものならば、いつか、比較もしてみるかもしれないが、
いまは、比較しようとは思わない。
また、
水曜日、
彼女のうちに行きたいって思っている。







自由詩 朝帰り Copyright はだいろ 2011-05-16 21:02:12
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