深紫のひと
恋月 ぴの
お疲れさま♪
優しく声をかけたいのだけど
つい嫌味な言葉なんかを付け加えてしまう
どうしてなのかな
額に汗かいて努力したのはあなただし
わたしは洗い物とかしながら眺めていただけ
たとえば食堂の椅子とか作っていて
脚の長さ揃わないからとノコギリできこきこしてたら
あれま、椅子のつもりが座椅子になってしまったよ
そんな失敗だとしても可愛いもので
あなたにしては上出来だよって褒めてあげたいのに
ぷいぷいとケチをつけたりしてさ
これも好きって気持ちのあらわれなのかも知れないけど
真剣なあなたの横顔をいつまでも眺めていたい
で、タオルとか差し出しながら
お疲れさま♪
よく頑張ったよねって言ってあげたいな
「頑張れ!」っじゃなくて
「頑張ったよね」
いつのまにか仲直りできたようで
おそろの座椅子からふたりして脚を投げ出してみたりすれば
お隣さんの庭先までわたしたちの彩りで
紫陽花の深い色合いに
カタツムリになりたかったあの頃とかを思い出す