染色体
中山 マキ




洒落にならない暇を
モラトリアムなんて仮定で
窮屈という態度は
煙草で憂さを晴らすように
それらしい野蛮なリズムで
「何にもなれない」とだらけた男を
片手で空を仰ぐように
いとおしいと撫でた。

昨日とは違う女を抱く男の腕は
背中を貫くほどに自由だって
母親が年甲斐もないピンク色の唇で
満足そうに言っていたのは
私が高校1年の頃
せがむことも諦めていた春。

広がって行く細菌のように
ステンレスのキッチンに
渦巻いているはずの
この目には届かない
身体で蔓延するだけの染色体を
恨んでしまえば終わりだから
折れるほどに私を抱く男を
ほんの一瞬だけ本気で思いながら
片手で空を仰いで、泣いた。






自由詩 染色体 Copyright 中山 マキ 2011-05-15 21:19:59
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