桃の花
鵜飼千代子




雛菓子をつまむ指先の
その感触は
母さまの温もり
 
ひとつまみ
もうひとつまみと
雛の飾りから拝借する君の
ないたわむれは
長き連合つれあいのたなごころうち
 
しばらくすると 足してある」
 
いつになく
幾度も同じ話をする君を
慈しみ 今、偲ぶ
 
?婆さん?と
女子学生のような時を刻もう
 
「あらあら、これは」と
顔を見合せ
くすくす笑いをしながら
 
 

          平成二十三年二月二十七日
          初出 詩誌「焔(ほのお)」第88号 所収





自由詩 桃の花 Copyright 鵜飼千代子 2011-05-15 02:50:59
notebook Home 戻る