季節はずれの海岸物語
はだいろ
youtubeで、
1989年の、片岡鶴太郎主演の、
「季節はずれの海岸物語」を見る。
そのころ、
ぼくは、東京で、寮生活をしていて、
なぜ、
このドラマをよく覚えているかというと、
ちょい役で出ている、
渡辺美奈代ちゃんの大大大ファンだったからだ。
でも、寮にはテレビがなかったから、
美奈代ちゃんが出ているっていうだけで、
どうしても見たくて、
たぶん、カプセルホテルかどっかに泊まって、
見たんじゃないかと、記憶している。
まさか、
20年以上もたって、こうして、
パソコンで見られるようになるなんて、
まさか思いもしないし。
しかし、
これは、きっと、絶対再放送もされないし、
DVD化もなされないだろう。
なぜなら、出演者が、凄すぎる。
鈴木保奈美はもちろん素敵としても、
寺門ジモンは今や肉評論家。
鶴太郎や室井滋は名優。
もちろん、美奈代ちゃんは、今でもぼくの、
絶対不滅のアイドルである。
そして・・・
可愛かずみ、後に自殺。
古尾谷雅人、後に自殺。
田代まさし、後に、逮捕、釈放、逮捕。
これだけの出演者が、
あの、バブルまっただ中の湘南で、
ユーミンや、サザンをBGMに、
軽くて爽やかな2時間ドラマに閉じ込められている。
そして、
ぼくは、悩みだらけの、19歳だったのだ。
あれから、
22年目の夏。
とうとう、ぼくにも彼女ができた。
あのころのぼくに、自慢をしたい気もするが、
きっとうらやましがったりは、しないことだろう。
ぼくは、
なんとか、結婚もせず、
評論家にもならず、
自殺もせず、
逮捕もされず、
それがよいもわるいもないけれど、
あのころの胸のもやもやや、
ゆくあてもないときめきを、
このドラマを見ながらまるで、
玉手箱を開けるように、
思い出してしまった。
こないだ、
江の電に乗って、
彼女と行った湘南は、すっかり曇っていた。
いくら耳をすませても、サザンもユーミンも聞こえてこない。
死んだつもりにならないと、人を愛したふりもできない。
こんどは、
晴れた日に、また行ってみたい。
季節はずれに、出かけてみたい。