積木
はるな


あらゆる事象は往々にしてひとつの地平に閉じ込められる。

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時間に切れ目を入れるようにして生活が綴じてゆく。

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猿の脳みそを吸いだした。

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斜視の女が窓のすぐ傍でこちらを凝視している。

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何もかもは平等ではない。

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木は立ったまま根が腐れても不平を言うことはない。私たちはどうか。

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物事を明確にするには日常的に訓練をしなければならない。
その訓練のひとつひとつは困難なものではないが、
多くの人々にとっては訓練を継続するということこそが困難である。

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紙と鉛筆に埃が積もりだした。キーボードにもだ。

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床が傷だらけになった。

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高まりゆく季節の中で意識が徐々に遠のいている。

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真夏日に椅子に座っただけで冷たい水が差し出されることを当然と思うな。

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平穏は忘却と相反しない。

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生は死と相反しない。

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機械音に満ちた空を男が一人泳いでいく。

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あらゆる可能性と不可能性があり、それらをいくつでも手にすることができる。
しかしそれは実在する一匹の蝿の存在には勝てない。

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言葉はある程度信用すべきものとしてあるが、縋るべきではない。

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思想を強要すべきではない。いつでも。

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幸福に形があれば、私たちはそれに値をつけていただろう。

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街には背骨をなくした人々が行き交っている。



自由詩 積木 Copyright はるな 2011-05-09 18:26:40
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