わすれな草 
服部 剛

ふせていた目をふと、上げた 
窓外の庭に 
今年もわすれな草の花々は 
空の太陽に向けて 
青い小さな笑顔達を咲かせている 

去年の今頃は
杖をつき、背中を曲げて 
わすれな草の花々に 
春の陽ざしのまなざしを注いでいた 
先生の姿が、今は無い 

とめどない涙が頬を伝う 
お別れの日  
(花を愛で、花の声に耳を澄まし 
 額の中に世界をつくる 
 押し花の歓びを、ありがとう・・・) 
たくさんの花々を敷きつめた 
棺の傍らで、そっと両手をあわせる 
私のいのりに  
今にも目を覚ましそうな 
先生の寝顔が、少し笑った 

生前に 
「お花は二度目の命を 
 ここで生かされるのよ」  
と言い、じっと背中を曲げたまま 
押し花をつくっていた先生 

瞳を閉じて、両手をあわせる
私の胸の中 

永遠とわに消えない花の国から 
こちらを向いた、先生が 
わすれな草を持って 
いつまでもずっと、手を振っている 








自由詩 わすれな草  Copyright 服部 剛 2011-05-05 07:19:19
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