そして夜が
あらら

かすかな肌の触れ合う音と溜息 生きている証のような唇の暖かさ
 熱く沈黙のような吐息 一度きり囁かれた言葉も繰り返される言葉も何もかも 拡がり続ける滑らかな曲線が 想像もできないほど遠い場所で 見たこともないほどのかすかな光を浴び 聞いたこともないほどの静けさのなか 跡形もなく消えゆく 聞こえるはずのない秒針の刻む音が 見えるはずのない鏡の向こう側に溶け入るように アスファルトの道路の上に粉雪は降り注ぎ 鍵盤からそっと指を上げて終えられた最後の一音のように 星々は空に溶け 僕は君に溶け入るのだ

そして夜が 夜の中に消えゆく


自由詩 そして夜が Copyright あらら 2011-05-04 02:33:08
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