とりろーぐ
雛鳥むく

i
水を撒く、
あなたの地球儀を
絞殺したのは
わたしではなく
わたくし、
であって
緻密に、
ただ緻密に、
あなたは欺かれ
白紙になった
太平洋で
立ち止まった海水は
沈没するのでしょう。


絹糸の
不確かさを
ひた隠しにするために
虫食いを
さしむけた銃口が
火を吹くとき
乾いた滴が
地図のうえに
流されたのだった
火葬する消火器
避難
できなかった避難経路
ひとつとして
痛みをともなわない
干からびた、
陥没がおとずれるばかりで


対話との対話を
繰り返す赤子の
指はたいてい傾いていて
そこから
とろとろ、と
三人称が零れている
わたしや、
あなたや、
それら。
公平に殺めることは
どうしようもなく
不可能だったから
いつも
地球儀を
おかあさんと呼び
白地図のうえで
浮上するのです。


はうる、
書き記すことが
答えという言葉の
答えだというならば
はうる、
風が渦を
巻いていますその中央で
横たわっているわたしは
今まさにこうして
わたしはゆるやかに死にました

書き記すことができる
わたしたちは
たくさん死にました
わたしも
わたしもわたしも
わたしたちみな
地球上にいるわたしは
絶滅しました と
書き記すことが
 
(余白に、)
 
はうる、
あなたは
憶測の記憶であり
繁茂する水の
渇きでもあるから
はうる、
自らの名を
いずれすっかり
わすれてしまうのでした


i
虚偽を
降らせる
flow
fluorite

たとえば
蛍石の主成分は
フッ化カルシウムだが
しかし、
わたしにとってそれが
ときに事実ではなかったり
あなたにとってそれが
ときに無意味な事実
だったりする
ひとつだけ言えるのは
蛍石の
やわらかなかなしみを
かつてあなたは
あいしていたこと
かつてあなたが
あいしていると言っていたこと
かつてあなたが
あいしていたとわたしは認識していること
そう記憶していること
flow
降ろう
虚偽を降らせる
そして
いつだってわたしは
わたしや、
あなたや、
それら。

虚偽として絞殺し、
trilogue
渇いた井戸や
単純な経度は、
白地図のうえで
なだらかに科学されるのでしょう。
 
 


自由詩 とりろーぐ Copyright 雛鳥むく 2011-05-01 19:30:31
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