忘却
たもつ

 
 
小さな虫を追いかけて
少年がどこまでも走っていきます
窓の内側でも外側でもなく
ガラスの中に広がる草むらを
何も持つことなく

私はいったい何時
ガラスの中から出てきたのでしょう
さっきまで少年といっしょに
あの厚さの中を走っていたはずなのに

私のことなど忘れてしまった人のように
少年は走っていきます
もうすぐ崖です
地面は終り、そこから先は
空気ばかりが続いています
 
 


自由詩 忘却 Copyright たもつ 2011-04-19 20:10:18
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