流域(good morning)
しもつき七

何億の
ひとたちの中心軸で
生産される架空のベッド
おやすみなさい
武装を剥ぎとってねむる子供たちを
今夜は守って、
あすには明け渡す
対岸にだれも待たない橋を
壊れやすいのでひとりでわたって
だから月を光らせた


カーテンを引いて
手を振ろう、
ほら
長い夢のたにまから
色とりどりの祝福と光のつぶて
なりやまないオルガン

賛美歌
というんだって


川下で
足を浸していた
交互に並んだその列を
壊さないようすべての頭をなでて

風が
通っていく
そらがながれる
抱き上げられたことのない子供が浴びる水は
いのちの匂いがする
陽光のたもと


どうしてだろう
こんな流域で
聞こえたばかりの歌口ずさんで



ねがえりをうつたび
たがいちがいの腕がぶつかった
皆だれのことも等しく
ぼくたち
と呼ぶ
他人を含めた自己
名付けないという愛


  ベッド
  落下して、
  揺りかご


他愛ない空想に終わりはない
だってさいしょから友だちだった
果てなんてないと思った
はしゃぐ目が
切っ先のような子供


雨の
たくさんやって来たあの日
ぼくたちはここで起きあがって
またすぐ眠ったんだったよね
公民館の、あかない窓から
迫る月を抱えながら
いっぱいになって
垂れさがる夜に
ぼくたちはまぶたをとじた
エレベーターが降りてくるから
何億のひとたちの、中心軸で
いつだって出会えた
はじめまして!



明け方が隣接する時間帯
手をとり輪になる子供の頭上で
月が光ってる


おちてきた

舟を建てたら、沖へ
まばたきのあい間に出航だ
見送る子供たちは青い頬をたたえて
伝う水は、なめるとしょっぱい
海 だった



自由詩 流域(good morning) Copyright しもつき七 2011-04-18 21:24:19
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