そして瓦礫の中で何回も目を覚ます。事実だ。メタファーでもマボロシでもない。またはずれくじをひく。くりかえしだ。一日経てば、今日がまた昨日になる世界で。



ニュースはかったるい。ネットは嘘しか流さない。祈りはどこにもとどかない。けれど、声がちいさすぎる。わかっていた。意思の強さは結果に必ずしも結び付かない。



朝。ガスタンクが金網越しにたくさん揺れてひかっていた。パイプラインは万全か？何に注意し何から身を守ればいい？窓を閉め、君の手をひいて遠出する。今日は物語の中に。明日はキスとキスとの狭間のぬるい闇のなかに。



春はむじゅうりょく。やわらかな水彩をまとって、たとえば廃線のホームではしゃいでいた。桜、薄い微笑、切れかけの街灯、モノクロのフィルムをつなぎあわせて、空だけが青。だから今は春だ。仮定でも夢でもない。線路ははじめから途切れていた。けれど、空想しよう。何事もおきなかったのだと。僕たちが無力ではなかったと。ト音記号のように、どちらからたどればいいかわからないラブだった。だから、何度もくりかえし、誤ればいい。温い痛みのなかで。音階のずれた子守唄をハミングして。



君は何かに敗れるようにつっこんでいく。薄い胴体を持つセスナ。まっさかさまにひかりのようになって。荒れた土地で、不意に訪れる痛みに対して、ぼくらはどのような感情を持ち合わせればいい？味のないゴムをのみこんで、ぶくぶく腹を膨らませるしかない。



夜。工場群は息をひそめ、人工の蛍のように青と白の明滅を繰り返す。ここにもひかりは届いていた。かつて？いまも？窓を閉め、きみの横顔にそっと触れようとする。きみは遠く、乾いた土のように微笑んでいて、濡れた僕の指では、もう触れることもできない。