庭師補佐見習いの僕は、少し捻くれた後で元に戻って思うのです。
黒乃 桜
例えば時々虚しくなって
何のために生きてるんだろうってなって
そんな気分のまま家に帰って
付けたテレビでは凶悪事件やら
ボーッと聞き逃す僕は偽善者?
頑張れ頑張れ訴えるモデル
疑問を抱く僕は偽悪者?
どっちでも良いが今はちょっと疲れてるんだ
僕には政権が無い 政治の事もよく分からない
今年の選択科目も 『発達と保育』の方取ったし
だからかどうかは知らないけど
学べるニュースの説明もいまいち良く解って無かったりして
テレビでお受験をした小学生が総理大臣のことを話してた
「リーダーシップが無い」「辞めた方が良いと思うよ」
街頭調査の酔ったおじさんと同じ事言ってる
君はフラフープを回せるのかい 一輪車に乗れるのかい
それも「出来たから何?」って言うのかい
僕もそう言ったりするけど 今からそんな無責任な事言っちゃダメだよ
目上の人には敬意をと僕は習ったから
子どもみたいに「そうりだいじんはみんながんばってるとおもうよ」って言うよ
もう一番要らないのは自動販売機でも原発でも戦争でもなく
それらを作った人間じゃないか?
そんな中学生みたいな発想 僕も思ってた時期もあった
でもじゃあみんなで死ぬのかい
放射能に脅えているくせにさ
そんな事言ったってどうしようもないじゃん
命は大事にって本当にそうだよ
なんだって産まれて来たんだよ
排除する事ばっかり考えるのって虚しくないの
僕は思わない 死にたくない
世界は綺麗 って事知ってる
曇り空 激しい雨 僕はちょっと憂鬱になるけど
僕が好きなハーブは鉢の中で 嬉しげに緑を強くする
今から彼らは全国各地に 庭という名の世界を造りに行く
全国の庭師の皆さんがそんな世界を明るくしようとしている
浄化して想造してって 壊した方が簡単かもしれないけど
出来ると思うよ
世界が世界として生きられる世界を
僕は止めない 綺麗だと評判だった手が
傷だらけになっても
去年の体育祭で体育館の隅に居た僕らの前に
幼稚園くらいの兄妹が走ってきた
追い掛けてきたのは僕らと同じの体操服の茶髪の三年生
急遽開催された「ちびっこかけっこ大会」
そんなマイクアナウンスに四方八方から子ども達が出て来て
生徒会長目掛けてダッシュしてた
プリキュアのパン貰って嬉しそうに
「ママ見て」って皆体操服目掛けてまたダッシュする
僕は思わない こんな人間がいなくなれなんて
彼女達は先週の日曜日に 子連れ卒業式をしたんだろうか
僕は知らない 世界が汚いなんて
ほらもう雨が上がった
僕の好きなハーブは鉢の中で 嬉しそうに緑を伸ばす
雨でも晴れでも 君らは嬉しそうだね
僕はただ疲れた勤労学生 世界の端っこで細々暮らす
生まれてこの方お受験なんて 一回もしてない僕だけど
時たま批判めいた事を言っては「まあこれは僕の意見だけどね」
自分が正しいだなんて全然思って無いけど
鳥が鳴いてて。太陽が降り注いで。
水の流れる音が遠くで聞こえて。花が優しい色で咲き誇ってて。
例えばそこの林檎の木の陰から好きな色のワンピースを着たあの子が。
大切なあの子が僕に向かって手を振ったりして。
花壇の周りでしりとりしながら猫と走り回る子ども達。それを見ながら微笑む二人。
僕の手元には本。傍らにチョコレート。
好きな歌をあの子は口遊む。
それで良いんじゃないかな
ただそれで良いんじゃないかなっていう世界を
今日もどこかで誰かが造ってる
それで良いよ それで良いと思うよ
モラトリアムな僕は無責任に
「みんな幸せだったら別に良いよ」と言うよ
僕もそんな世界を造るのを夢見て
今日も小さな段ボール箱に別れを告げるよ