血蛾 / 傷つける想い
beebee





血蛾が私の手に止まっている
皮膚を引っ掻く三対の足
私は妖しげな寒気に浸り
私の眼は喜びに満ち
その喜びが零れ落ちて血蛾の羽根を打つ
ブリッとした紡錘形の腹部を撫でぞると
二つの指で扱きたくなるような
柔らかさとひだひだだ
私の指に羽毛のように優しい鱗粉が絡みつく
手の中に握られた血蛾は狂ったように腹部を振り
私の手は妖しげな喜びに震え
身体じゅうの毛穴から嘔吐が噴き出す
握り潰すと私の指は緑に濡れ
腸のように白い糸が潰れた腹部から架かる
血蛾の戦慄きにも似た痙攣は
その糸を伝って私の心につたわっている
心の中に溢れている
この妖しげで病的な喜びは何だろう


*扱(シゴ)き
*戦慄(ワナナ)き


自由詩 血蛾 / 傷つける想い Copyright beebee 2011-04-14 01:58:05
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傷口(自虐、暗闇)