髪一重 / ****'04
小野 一縷

韻を踏み外したまま
蓄積する行末から
こぼれ落ちる
行間という溝に
言葉の葉脈を
透かし見る

空と触れ合う海
陸を撫でる風
揺れる草木

点滅する青
震える黒線
遮光される視線

岩を削る水滴
律動
さざめき

黒の中を流れる赤
深緑の瞳に沈む青い石
夜の奥に埋っている黄金の星
闇を押し寄せる輝きの波紋

日の出から朝への移行
雑踏の産声

子供たち
溢れる笑顔
ざわめきに悪寒
笑い声

頭蓋
軋み
痛み

失意
劣情


酸性濃霧

轢かれた仔猫
一生命の結末
絶滅する野良犬
増える人類
減らない人類
激減する酸素
増える一方の塵


微笑み
柔らかい頬
二つの半円の唇
鑢の舌
突起する赤い芽
皺のない目尻
憧れ

黄ばんだ歯
萎れた指
灰色の爪
微動する鼓膜


めくるめく被写体

壊れたブランコ
メランコリ

モダンなラッディズム
血の色の反吐
オレンジの油っこい艶の額
安いビール
潰れた拳
臭うジーンズと足
家庭愛

変化する空気圧
圧死した雰囲気

グリーン

十一月の雨
七月の雷
四月の雪

千行の詩
捲られた襞
現れた少年性

千年分の無理解

老婆と少女
長い黒髪と縮れた白髪
唾と愛液

純銀と水銀の違い

歪な歩き方
明後日を向いた肘の角度

染み込む液体窒素
拡散する鉛玉

罅入る静寂
緊張する視神経
染み漏れる黒い血尿

厭らしく絡み合う煙
到着のない逃避行
脚のない渡り鳥

四季に分類されない時期
忘れられてゆく月日
捨てられ汚れた脳内玩具

身体中に特定希少種植物の根を張り巡らす

不安と表裏一体の高揚
絶望の裏に芽吹く希望

ここは コインの裏と表の 狭間だ





自由詩 髪一重 / ****'04 Copyright 小野 一縷 2011-04-13 12:31:07
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