夜桜
はだいろ
六本木一丁目の駅から、
スペイン坂をのぼり、
それから、
桜坂へ向かう歩道橋で、
夜桜のまっただなかに。
ぼくは、
何度目かの、
デートとなる、その37歳の女の人と、
オープンテラスで、
アールデコと、
ロイヤルミルクティーを、
キャンドルライトに手をかざしながら、
飲んだのだけれど、
ぼくの気はくるくる変わって、
やっぱり、
どうしても、
この人と付き合うってゆう、
ふうには思えなくなってきた。
なにか、
ブラックなこころの向きを、
見過ごす事のできないのは、
もちろんお互い様なのだけど、
電話の最中も、
ひっきりなしの地震、
ぼくはこころを惹かれない、
ただおっぱいをめくってみたいだけ、
よくみればやっぱりブスだし、
ホワイトビールではごまかされたりしない。
ぼくはこのとおり、
ちんけなひどい男で、
良心のかけらもありはしないよ。
寝っころがって、天皇陛下も見上げてみるさ。
ああ、
お金がないけど、
女の子と遊びたい。
遊んでるのがいちばんいい。
無駄遣いしないお金なんて、なんの意味があるだろう。
ボブディランの、モノLPボックスを買ったら、
ものの見事に、
週末、400円だけが残った。
あの人と、
昼間に遊ぶ約束をしたけれど、
もう、どうでもよい気でいっぱいだ。
手の届かないような美少女に、
片思いして、
ストーカーになって、
逮捕されて、
仕事も失って、
留置所で星を見たい。
聖書と、
落語集だけを読みたい。
小学校のころ、好きだったあの子に、
たったひとつの、
詩をもういちど、
ささげて死んでゆきたいです。