爪と皮膚。
菊池ナントカ


指先は冷たく、
人ごみに入る勇気は無いな。
爪って皮膚の一部なんだって知ってる?
なんで、今、思い出す。


電車内で女の子がマニキュアが剥がれたのを気にしてる。
「爪を綺麗にしてないと良い運が入ってこないのに!!」
そうなんだ、関係ねーけど。

雨が電車のドアを叩く。
雨が電車の窓を叩く。
雨が電車のドアを叩く。
雨が電車の窓を叩く。

爪先に、ささくれが出来て、いってぇなぁ。
駅から降りたらダッシュでタクるか。

手袋を忘れた自分を恨んで、
傘を忘れた自分を恨んで、
薄いコートを着てきた自分を恨んで。

家に着いたら、ささくれを爪切りで切ろう。

雨が電車のドアを叩く。
雨が電車の窓を叩く。
雨が電車のドアを叩く。
雨が電車の窓を叩く。

くしゃくしゃの髪をいじる。
隣の男は親指を噛った跡があった。
隣の女はあり得ないネイルアートをしていた。

爪は皮膚の一部なんだぜ。
知ってるかい。



自由詩 爪と皮膚。 Copyright 菊池ナントカ 2011-04-07 02:03:35
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