生活未遂
本木はじめ
丘しかない街の周りをてんねんと呼ばれるきみの自転車がゆく
「本当は円かもしれない」そう言って虹の半円探しだすきみ
ていねいに折り目をつけてあれはシャツ飛んでゆくのはアイロンですね
きみの眠るベッド上から聞こえくる三十一文字の寝言を掴む
冷蔵庫開ければきみが去年から冷やし続ける芸術の秋
かくれんぼ遠くに見える鬼すすき金棒持ちしきみが微笑む
洗濯機まわせば回る観覧車とおいあの日のあこがれよ去れ
ゆっくりと冷めてゆきます夕暮れにあなたが捨てた自転車の鍵
舞い上がる反対車線上空の離婚届けに描かれし蝶