陽だまりの中で猫がにゃぁとなく
ベンジャミン

近所のスーパーの駐車場で
学校帰りの中学生が
わいわい騒ぎながらハイタッチしている

その頃
近くの交番の前で
原付に乗った少年が何やら警官ともめている

その頃
そこから遠くないどこかの公園で
かくれんぼをしていた子供が淋しくて泣いている

その頃
近所のスーパーの駐車場で
ハイタッチをしていた中学生が万引きで捕まっている


(何かが間違っているような気がする)


少しずつ変化してゆくものに
しがみつくようにして生きるのは本能なのか
正しさや過ちを考えるより先に
取り残される怖さを覆い隠すために


その頃
近所の住宅街で
人馴れした猫が道の真ん中で居眠りをしている

ぎりぎりまでせまってくる車に気づいているのか
それでも猫は車道のど真ん中で
ふと目覚めたふりをして

ゆっくりと姿勢を変えながら
ちらりと運転席の方に目をやり
面倒くさそうな口を開けて「にゃぁ」となく

何となく
何かが間違っているような気がする

けれど
その何となく感じる不確かなものが

猫の肉球よりも柔らかく
世の中を包みこんでいる

それはきっと

陽だまりにたくわえられた
熱のようにあたたかいはずなのだと

何となく猫が教えてくれている


自由詩 陽だまりの中で猫がにゃぁとなく Copyright ベンジャミン 2011-03-29 22:38:34
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