「すべてがつりあいのなかで」
ベンジャミン

たとえばだれかのこうふくが
だれかのふこうのうえにあるとしたら
それはかなしいことかもしれません

そのかなしみがまた
だれかのよろこびのかてになっていたら
とてもふくざつすぎてもう
ただしさとかあやまちとか
まっすぐにかたることなどできません

かなうならぼくのこうふくが
だれかのふこうをささえるものならば
こんなにうれしいことはないのでしょうに

こうふくはあまりにあかるいので
くらがりにひそむかなしみは
どうしてもみおとしてしまいます
じぶんがくらがりにいるときも
こうふくはあまりにあかるいので
くらがりからうらやましそうに
どうしてもねたんでしまいます

そんなじぶんをかんじるのもいやなので
ぼくはできるかぎりいきをひそめて
そっといきていたいとおもったりもします

けれどそれはあまりにさびしいので
ときどきぼくはよわむしになって
ちいさなむしのいっぴきのように
じぶんのいのちをうたいあげながら
そのばにあることのよろこびと
いきていることのかんしゃを
わずかなまんぞくをもとめてなくのです

かなうならそれが
よろこびでもかなしみでもなく
すべてがつりあっているせかいの
ひとつのりそうであるのなら

たとえばだれかのこうふくや
たとえばだれかのふこうなど
まるでかんがえもせずにいられるのでしょうが

きょうもこんなくらがりで
こうしてよどおしことばをふいて
ゆれるくさわらにまぎれながら

すべてがつりあうゆめをみて
いつまでもなくことをやめません


自由詩 「すべてがつりあいのなかで」 Copyright ベンジャミン 2011-03-25 02:26:13
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