『愛しいあの子が泣いている…』
座一



雨よ 今は降らないで
あの子が 泣いているから
そんなふうに 冷たく 無残に しとしとと
愛しいあの子に 降らないで


今だけは 太陽よ
あの子に笑いかけてやって
きっと きっと 新しい希望が持てると 照らしかけて


雲よ 追い抜いていって 
あの子を 駆け足で 追い抜いていって
広がる空に吸い込まれて 
その先に未来があると信じさせて


海よ 返しておくれ
あの子の大事なものたちを
根こそぎ さらった ものたちを
泣いても泣いても戻らない
笑顔の行方を 探しておくれ


嵐よ… 吹け 猛れ 私のもとに急いで来い
もう決して あの子のもとには戻らぬように
私は全身に雨風を受けて問うよ
どうしてあの子を 行かせなければならないか
どうしてあの子が 悲しまなければならないのか


自然よ 穏やかな自然よ
そよ風… ジンチョウゲの香り… 立ち並ぶ木立の影… 
愛しいあの子が泣いている
だから今は
今だけは どうか優しく











自由詩 『愛しいあの子が泣いている…』 Copyright 座一 2011-03-24 05:07:48
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