ノート(ふるえのあとに)
木立 悟






心は刃
心はまわる
心は発芽
心は背骨
無いものの羽


泣き声が揺れ
振り返ると海に山に居る
空から直ぐに
降りてくる指
誰もいない街を描く


灯るもの 灯らないものの
差異に生じるいのちから
安全ではない手のひらへ
ぼとぼととぼとぼとと
もたらされるもの


風車が風車に触れて壊れて
空の空まで刺しつらぬいて
受けたことのない涙に濡れる
海ではないあらゆる場所から
波ではないものが波をそそぐ日


この毒は
あなたの毒より濃いものか
あなたという名の毒より古く
ここに現れたものなのか
応えを待つ間に終わる音楽


こがねがこがねに遠去かり
夜はさらに暗く明るい
誰もいない海辺の道を
鳥のかたちの何かがすぎる
新たな人の名を呼びながら


望むような望みは来ず
ありふれたものがありふれて在り
皮膚を皮膚にじっと集めて
自らの熱に耐えながら
見飽きた手のひらの水路を見つめる


そこにいない子
そこにいない手
しずかにしずかに近づいて
うずくまるもの 泣き叫ぶもの
立ちつくすもののそばに添う

























自由詩 ノート(ふるえのあとに) Copyright 木立 悟 2011-03-21 21:38:45
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