月と太陽と夜に / ****'02
小野 一縷


ぼくは きみの手に 導かれ
太陽に 触れる

太陽が輝いている まだ 何色でもない 
太陽が 沈む ぼくに 
巨大な 火 焔
太陽が 沈む ぼくに

太陽の 中の ぼくの 中で 太陽が 燃えている
ぼくの 体液を 燃料に
胸は 太陽の熱 血は赤い火柱 焼けた血は そう 黒点

ぼくは 太陽に沈んで
その真ん中の 黒い瞳の中に 潤んで きみが 映って
悲しそうに  
きみは 太陽の影 
そう 真っ直ぐ 月から ぼくを見下ろしている

夜は深い 黒
そして 
影のように 黒い炎を 夜に かかげて 
ぼくは また
目覚める
きみの 涙声に ぼくは 再び 燃焼する
きみの 涙を 朝と夜に 溶かして
ぼくが 銀色に 明けてゆく 

ぼくは きみを 信じる 
この身体の 熱が きみを 
きみの導きを 信じさせる
熱の 伝導 発光
ぼくは きみを 信じる
そして ぼくは いつか
きみの 涙を 蒸発させる
ぼくには それが 出来ると 信じる

夜明け
ぼくが 明ける 今 
開く
ぼくが 明ける 今 
全て 
明ける
でも きみの姿は 
ますます 潤んで
それだけが ぼくの絶対的燃焼を 唯一
化学的に 阻害する

きみは 月の冷たさを 知っている
きみは 月の冷たさの 中にいる
きみは その痛みの 只中で 凍えている
ぼくの 
まだ知らぬ 温度 凍てつく領域を きみは知っている
やがて 燃え尽きる太陽を きみは知っている

それでも まだ  
ぼくには 足りない 熱が 太陽が 
足りない
ぼくは 言える
きみの悲しみより ぼくは 飢えていると
今以上の 焔を 渇望していると
それは もう熱じゃない 刺すような 痛み
冷たさ そう きみの持つ その凍えた 震えが
ぼくは 欲しい

ぼくは 優しく 冷たく 刺さしてくる
鋭利な 月の明りが 欲しい
ぼくは 月が欲しい 
まるで きみのような月に
ぼくは 羨望を 燃やす
ぼくは 情動を 焦がす
ぼくは きみに 憧れる





ぼくは きみを 


きみは 泣いたまま

季節と日付を変える風が
太陽と月の間 夜と朝の間に 吹いている

ぼくは 燃えたまま

きみは 冷えきった涙を 拭きもせず
ただ 熱い風に 吹かれている








自由詩 月と太陽と夜に / ****'02 Copyright 小野 一縷 2011-03-20 16:43:23
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