Bad Moon Rising
ホロウ・シカエルボク
カルアミルクな夕暮れを見送って
無傷の身体を預けるベッド
バラエティ・ショーの間にもそそくさと流れる速報が
「恐れることをやめるな」と警報を発する
「もうすぐ来る」「もうすぐ始まる」
得体のしれない予言者たちが
近い未来に言及する
まだ来ないものを恐れる気なんかない
結果どちらに転ぶかは
見えざる手に委ねるしかないものだ
海の彼方や泥の底や瓦礫の下の無数の死体を
てめえの純粋のオカズにつかうやつばかり
プラグインしてディスプレイ灯してんなら
黙祷するだけに留めなよ
暗闇で明日に向かって目を見開いてる連中のそばで
痛くも痒くもなかったくせに
涙をひけらかすのはどうかやめてくれよ
たくさんの命がいちどきに失われればそれは悲劇なのかい
ひっそりと死んでゆく誰かはいまこの時にもいるはずさ
命の重みは
液晶のワイド画面に教えてもらうものじゃないはずさ
すべての失われるものたちを
あんたは支援出来るのかい
瓦礫の上に立ってポエトリー・リーディングすれば
キリストの奇蹟がふたたび始まるとでも思ってんのかい…
俺はキッチンに立ってほんの少し喉を濡らす
ちくしょうめ
眠る気が失せちまった