調べ
電灯虫

鼓膜にまかせっきりにせず、僕という存在をもって、
世界の音を聴けるはずで。


普段走っちゃいけないと言われているからか、
一般的禁止が、
時間的に限定的に解除されたその暇に、
そろそろ大人だと自認してても、
我ら男はどうせいつまでも子どもで、
廊下で打ち鳴らす打ちっぱなしのコンクリを蹴り上げると、
クラス1のイケメンとか、
剛田さん顔負けの腕っぷしとか、
眼鏡で小さい博士っぷりも、
ブイヤベースの極上のスープを醸成し、
皆で等しく舌鼓を打つ。


光の淡さが紳士然として、
決して邪魔をせず、しかしながら闇を優しく薄く拡げ、
ベッドの冒頭部分だけは譲れないばかりと強めに出て、
ムーディなサックスの調べにて、
愛をエスコート。
ここまでしてもらったのなら、
失礼のないように、
聴き逃さないように皮膚の感度のつまみをひねる。


僕の三輪車よりも高性能な、
移動する世界の中で、
4つあるうち1つの、
世界の向こう側を開けたなら、
無音が待ってましたと言わんばかりに、
如何なく力を発揮する。
犬種を超えた友情とともに、
首いっぱいに逆らって共に歌う。


新品のラックの上でそろって笑う二人が
経過年数の差のためか、
愛の誓いの鮮度の違いか、
落ち着いているようにも、愛に飽きているようにも見えて、
毎朝の忙しさの中、部屋を右往左往する視界の隅で、
無視したいのに、
心の、ピリっとした泣き始めの声が鳴り響く。


高度成長期の地盤沈下があったのかなかったのか、
自動販売機以外、何にも変わらないオラが街は、
外見以外は変わらない、
見事な世代交代をした名物店主があの日の売込みを再生し、
母と娘との手の端でレジ袋がカサカサとシンバルを刻み、
道端の近所の井戸端会議から漏れる、
噂話のストラディバリウスの年季が入った大声と共に、
故郷楽団が懐かしきパレードを今日もする。


何度何度語られ、描かれても、
小鳥と陽光のデュエットはその素敵さを失わせてくれなくて、
森林が名乗りを上げ、
さざ波もカルテットを申し込んだなら、
緯度と経度を主旋律に、
万感の世界が謳う。

やっぱり、
鼓膜にまかせっきりにせず、僕という存在をもって、
世界の音を聴けるはずで。


自由詩 調べ Copyright 電灯虫 2011-03-10 22:17:14
notebook Home