たったか駆けるのだったか
N.K.

軽やかなのか 駆けて行く
何月のウサギか たったか たったか
そうして今年も
平年と同じく たったか
夏から秋へと走り抜けられたのか

ウサギは気まぐれだった
季節の段差を前にしたのか
耳をピンとさせ後足で立ち上がり
記憶の上を …だったか …だったか
この世の気配を窺ったりもする
気配を察したウサギはまた駆け出して
繰り返される鬼ごっこの隙間へ消えて行く
鬼ごっこをするなら皆で鬼になって
ウサギを追いかければ面白いのに
そうして埋め合わせられれば良いのに
一つの白い躍動で夏と秋ほども違う各人を

心躍る冒険は日常から浮かんで来ないまま
自分はアリスだったか ウサギだったか
あなたは高橋さんだったか
君は鈴木君だったか
秋が過ぎ周りとの段差を埋めようと求めるが
参加していることなど自分は疾うに忘れた
鬼ごっこのルールを皆振りかざし
怪訝そうに訊き返す
今はあなたが鬼でしょう?

相手と自分の谷間を跳ねて行くのは
もう十二月のウサギだったか たったか
まだ皆気づいていないのだったか
鬼ごっこをするなら皆で鬼になって
ウサギを追いかければ面白いのに

クリスマス間近に皆が
鬼を他人に押し付けようとばかりするので
独り言ちるのだったか
ウサギよ 軽やかに年を超え
走って 人の間を縫い合わせて跳べ


自由詩 たったか駆けるのだったか Copyright N.K. 2011-03-08 21:29:50
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