螺旋
アンテ


ここは螺旋の国なので
なにもかもが螺旋状にねじれています
太陽の光も風も雨もすべて
螺旋を描いているので
草花も木も螺旋の形に育ちます
国内で生産される物はどれも
螺旋の形をしています
なにしろすべてが螺旋状なので
螺旋についてとりたてて話し合ったり
分析や対策をする人などいません
外から螺旋の国に入るには
ねじれた門を通り抜けなければならないので
足を踏み入れた時には
身体はすっかり螺旋状にねじれています
門を逆にたどって外に出れば
身体が逆にのばされて
もとの形にもどれるのかもしれません
けれど螺旋の国にいると
ねじれがどんどん進行するので
いちど門を抜けたら最後
身体の形は門の螺旋にうまくはまりません
螺旋がますます進行して
直径も間隔もますます細かくなって
ついにはバネになって
ぴょんぴょん跳ねる人もいます
勢いよく飛び跳ねたきり
どこかへ行ってしまった人もいます
螺旋に囲まれていると
時々むしょうに息苦しくなって
そんな時は
なんにもない広場に出て
身体を丁寧にのばしながら
ぼんやりと螺旋について考えます
螺旋の形を認識している自分について考えます
螺旋状の頭や目でなにかを見た時
螺旋状の光が伝える物の姿は
はたして螺旋の形に見えるのだろうか
などと考えます
答えが見つかりそうな時もあるけれど
たいていは
考えが螺旋状にぐるぐる回りだして
いつまでたっても結論にたどり着けません
ぐるぐる迷走しながら
なにかが間違っているのは確かなのに
きっかけが見つかりません
きっかけを見つけるきっかけを探して
ぐるぐる回りつづけます
ぐるぐる回りつづけます



自由詩 螺旋 Copyright アンテ 2004-11-04 01:20:13
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