【批評祭参加作品】この世界を特別だと思ってる人たちへ(相田さんへのレス)
小川 葉
詩を書くこと、つまり芸術というのは、一枚の写真を撮ることに似ている。
一見、平和そうに見える世界も、逆にそうでなく見える世界も、
ここからこんなふうに写真を撮れば、こんなふうにも見えるでしょ、という、
問いかけでしかないのだ。
そして詩人がするべきことは、そこまでで、
芸術家は、そこから先を語るべきではない。
(もし語りだしたなら、その言葉はきっと書店の、自己啓発コーナーに移動されることだろう)
なぜならそこから先は、
読者、つまり批評する側の仕事だからだ。
詩人がある限り、批評もなくなることはない。
なぜならこの世界がある限り、
この世界について考えるべき人が、
いつもそこに用意されているからである。
わたしのように、あなたのように。
だからこそ、詩人は煩悩から解放され、
書くべきことを書き、
またそれを読み、批評する人は、
なぜそこに煩悩がないのか、その理由を、
しっかりと検証するべきである。
この世界に循環があるとしたら、
そういうことなのではないのだろうか。
詩、以上に、
批評が難しくなってはならない。
同時にこれは、こう読むべきだと、
決めつけてもならない。
そして、詩はもはや、
このように書くべきだと、
決めつけられるものでもない。
なぜなら世界は、
そのようにあるのだから。
そのようにしか、
ありえないのだから。
あらかじめ、
そのようになるように。
でなければ、きっとここに、あなたはいない。
たぶん、わたしも。
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第5回批評祭参加作品