【批評祭参加作品】この世界を特別だと思ってる人たちへ(相田さんへのレス)
小川 葉

 
 
詩を書くこと、つまり芸術というのは、一枚の写真を撮ることに似ている。

一見、平和そうに見える世界も、逆にそうでなく見える世界も、
ここからこんなふうに写真を撮れば、こんなふうにも見えるでしょ、という、
問いかけでしかないのだ。

そして詩人がするべきことは、そこまでで、
芸術家は、そこから先を語るべきではない。
(もし語りだしたなら、その言葉はきっと書店の、自己啓発コーナーに移動されることだろう)

なぜならそこから先は、
読者、つまり批評する側の仕事だからだ。

詩人がある限り、批評もなくなることはない。
なぜならこの世界がある限り、
この世界について考えるべき人が、
いつもそこに用意されているからである。
わたしのように、あなたのように。

だからこそ、詩人は煩悩から解放され、
書くべきことを書き、
またそれを読み、批評する人は、
なぜそこに煩悩がないのか、その理由を、
しっかりと検証するべきである。

この世界に循環があるとしたら、
そういうことなのではないのだろうか。

詩、以上に、
批評が難しくなってはならない。

同時にこれは、こう読むべきだと、
決めつけてもならない。

そして、詩はもはや、
このように書くべきだと、
決めつけられるものでもない。

なぜなら世界は、
そのようにあるのだから。
そのようにしか、
ありえないのだから。

あらかじめ、
そのようになるように。
でなければ、きっとここに、あなたはいない。
たぶん、わたしも。
 
 


散文(批評随筆小説等) 【批評祭参加作品】この世界を特別だと思ってる人たちへ(相田さんへのレス) Copyright 小川 葉 2011-03-06 23:03:20
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