尾根歩き
蒲生万寿

まだ春が来ない山
夜が明けた静かな土を霜が押し上げる
傍らで小鳥が動き始め
冬枯れの落ち葉をひっくり返す

左手は日の光に溢れ
右手は陰に沈み黙す
私はその中の尾根を行く

歩き出してそこそこの時が経った
いくつかの頂上を越えて行き
取り立てて言うべきこともないところを目指し
先へと向かう

汗ばむ体に荒い息
されど私と辺りとは何ら隔てもなく
矛盾もないように思え
面白い

土、足、体、頭、空気、空
一連のつながり
常緑の葉、枯れ木立、衣擦れの音、木漏れ日

私は知る
それは何時でも共にあるものばかり


自由詩 尾根歩き Copyright 蒲生万寿 2011-03-02 21:07:10
notebook Home