茎魚
凛々椿

茎魚 しみています


四角い箱から低く低くを覗いていますと
狭く苦しく青く
殺されのこどもたち
泣いています
ずらり並び 爪先 しみ しみ
口開き
目潰れ
鼻潰れ
耳潰れ

低温の
会話
天真爛漫に首 そり返し折れ
目 くるる 開き 開き
あちらへいこうよ
あちらへいこうよ と
風 歌い
悲鳴 歌い
母 泣き
しみ しみ


茎魚
こどもの多く
虫のかけらのようでしたよ
燃やされるための芥のようでしたよ
でも仕方ないのです
それでも晴れ晴れしく 空はあるのですから
晴れ晴れしく 晴れ晴れしく あるのですから


茎魚

お久しぶりですね 40年ぶりでしょうか
まだ しみています
とても とても


狭く
苦しく
やわらかく
本日は四辺の箱より
高く高くを覗いています
風はやく
花つよく
空さわぎ
鳥しなり
みちるみちる雲 小さく小さく 立ち
隙間より光 みち
いつしかの 
美しいものたちを 覗いています


茎魚
殺されぬ大人たちも
泣いていますよ

思い 持ったこと
知能 持ったこと
年月 重ねたこと
重く 不要なこと
首 そり返し
耳朶 濡れそぼち
生き腐っていくことへ


 あちらへいこうよ
 悲し悲し
 あちらへいこうよ
 楽し楽し
 あちらへいこうよ
 悲し悲し
 あちらへいこうよ
 楽し楽し

だれかの声がとても遠く


 悲し悲し
 楽し楽し

聞こえるようです


それでも 晴れ晴れしく空はあるのです
晴れ晴れしく 空が あるのですから






080922


自由詩 茎魚 Copyright 凛々椿 2011-02-19 14:01:57
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