ただのヒト
シホ.N


ぼくはひたすら逃げたんだ
あの夢のときのなか
すべての安住と
厄介なことたちを捨てるために
ぼくは何者でもなく
ぼく自身でさえない
ただのヒトになるべく
すべての日常を捨てて逃げたんだ

ぼくは泣く
ただのヒトも泣きはする
遠い安らぎが
感傷を刺激したりする
ぼくは決めたんだ
自分で決めたんだ
感傷たちの中におぼれないために
逃げることを決意した

だからぼくは
もはやぼく自身ではなく
ぼくらしく生きるなんてコト
どっかに置いてきた
ぼくはただのヒトになるべく
すべてを捨てる
ぼくはどんな安らぎも厄介さも捨てて
この身ひとつでただのヒトになる
そして
ただのヒトも泣きはする
ただのヒトも
悲しむことからは逃げられない

濡れる眼を
隠したりしない
ぼくという一人称を
捨てる
世界中の人々は
一人称で生きている
その主体主義を捨てて
目下ただのヒトたる自由人


自由詩 ただのヒト Copyright シホ.N 2011-02-17 23:41:12
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