雪が隠す
和田カマリ

降りしきる雪が街を隠す
遠景を有耶無耶にする
私に残されたのは
鉄塔の太い骨組みと
幾筋かの高圧電線
切れ目も曖昧に天国へと続く

薄墨に浸された無数の紙吹雪
街の汚れを清める事もできず
幾重にも覆い隠して行く

周期的に発光する空
そのたびに近づく夜
ただどれだけ暗くなっても
この雪の日の幽かなグレイは
私の網膜から消えはしない

そしてその
沈黙の更に奥には
忘れていた紫色が埋もれ
静かに燃え続けている

あの日
指を絡ませて
窓の外に
降る雪を感じながら
蛹化した私と女の
息のような
嘘のような
思い出のような









自由詩 雪が隠す Copyright 和田カマリ 2011-02-14 19:03:58
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