不死身
砂木

雪づたいに屋根に登れる
大雪の林檎畑は真っ白け
ペンペンと枝の先が雪の上に見えるのみ
どこに木があるのかもよくわからない

横に伸びた枝が雪の重みで裂けて
林檎の木が全滅してしまう
父は 降り続ける雪の中
雪を払ったり木を掘り出したり
連日のように木を救いに行ってはいるが
降り止まない雪 溶け出したら
なお重くなる雪という奴に立ち向かうのは
七十二歳という歳でもあるし
無理して体をこわしたり
あまり苦にして病気にならないように
林檎の木はどうなったと
義理チョコを持って行きつつ聞いてみた

俺は不死身だ と父が言った
春になったらだめになった木の片付け用に
チェエーンソウの手入れをしておくと 母が言う

大丈夫だ心配するな 全滅はしない

接木して高くなりすぎて 林檎もぎが大変だと
ぼやいていた木などが生き残り
でも全貌はわからない
林檎の木や いろんな木の死骸が
雪解けと共に 修羅を迎えるのだろう
やっと林檎を成らせるようになった若木は
雪に砕けてしまった

だけどそうだ 私が諦めては林檎の木に失礼だ
雪の中 密かなる壮絶な戦いをしている生木
怒れ 回りの雪なんか 溶かしてしまえ


自由詩 不死身 Copyright 砂木 2011-02-13 11:39:10
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