金玉あるいは男根の家政学的考察
salco

主にフリップ殿下に捧ぐ

玩具の電車を片手にドテドテと
今年3才の子供が走り回っている
「キングコングだど!」
世界中に宣言すると
最寄りのエムパイア・
   ステヱト・ビルヂングによじ登り
肩に両足を掛けて、もじゃもじゃ頭を乱暴に
揺さぶるのだ
やさしいパパはそんな時
どちらかと言えば不幸のどん底だ
何故ならモンストラスへの夢はすっかりと
日常生活に埋没して
分譲マンションの一室に収まる一匹の
リスザルと成り果てて
陽だまりの中でじっと年を取って行く
巨大タンカーで大暴れする事も
スターレットのおっぱいを剥く事もなく
… いや、僕は死ぬのは御免だよ

女の武器はその腹の奥に在る
女房の傲慢は子宮の中で地球儀を回している
よしそれが黒いチャドルを被っていようと
フェミニスト会議の円卓の下で
鋼鉄の脚線美を組んでいようとも
彼女も終局、男を名指しで召還し
誘惑者、強姦者、破壊者、無能者の誹りを並べて
契約不履行をなじるのだ
5年前はあんなにしおらしく愛らしかった
ウエディングドレスの花嫁が、
今は稼ぎの悪い亭主に噛みつく
欲求不満のメス犬に成り下がった

所帯を持つとは、愛の営巣の幻想に
惜別と後悔の涙を捧げつつ
女子供に腰をしっかり挟まれて
その生活に奉仕する毎日に他ならない
彼は女房の要請に従って惨めな金玉を銀行に預け
ローンの返済に追われ続ける
女房は通帳の上に被害者のように横たわって
夫に着せるセーターを編んでいる
そんな時、彼は女房の腹に頭を載せて
男色の夢を密かに見ている
既に男が女に対して不能であるならば
一体その性に何の意味があるだろう
潜在的な厭悪が陰茎の持ち主に宿る時
女房がレズビアンでもない限り、婚姻は破綻している
女王の腹の為にこそ
王権が在続し得るという現代においては


自由詩 金玉あるいは男根の家政学的考察 Copyright salco 2011-02-07 22:43:35
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