大好き
吉岡ペペロ

面白いことを言うと部長はわらっていた

目をとじたままわらっていた

腹水がベッドのしたに溜まっていた

なにかの拍子に一部が床にこぼれていた

それはあざやかな黄色だった

ダンディな部長の腹はまだ脹れたままだった

もう2リットルは抜いているそうだ

前歯がぬけているようにみえた

歯がちいさくなっていた

梨のようなひかりを帯びた顔だった

大好きだとことばにして伝えた

うでをさすってそう伝えつづけた

老いて逝くのではなかった

悔しがるのは役目ではなかった

いちびょうでもじぶんの人徳を

この光や空気のなかであじわって欲しい

そんなことすら頭にはなくうでをさすっていた





自由詩 大好き Copyright 吉岡ペペロ 2011-02-02 09:21:54
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