私、総勢無限大
Seia


二人掛けの座席に体を埋めて
揺られている 誰かが思う

向かって右の初老の男性には
孫が居たりするのでしょうか

薄いグレーのような日の事です


井戸の中から連れ出してと
人に焦がれた蛙が言いました

奈落の底から青空へと
幾ら日々をコマ送りに飛ばしても

時間が今を破棄していきます


台所に立った 誰かに半身重ねた右
そこに もしかしたら女の私が居て

冷蔵庫を開けた 誰かに半身重ねた左
そこに もしかしたら男の私が居て

もしかしたら そのどちらかが
普通だったのかもしれない


それは想像の中の分岐ルート
それは想像の中の転機スイッチ



白く灯る電球を握り潰したら
傷だらけの 手のひらを見て

酷く虚しい感情を押し殺し
痛さで我に返るのでしょうか

薄いグレーのような日の午後です


宇宙の中で漂いたいと
普通に恋した私が言いました

自宅の窓から星空へと
幾重にも積んだ想いを飛ばしては

世界が今を記録していきます


コンタクトを捨てた 誰かに半身重ねた右
そこに もしかしたら昨日の私が居て

髪を泡立てた 誰かに半身重ねた左
そこに もしかしたら明日の私が居て

もしかしたら そのどちらかが
今日だったのかもしれない


それは想像の中の分岐ルート
それは想像の中の転機スイッチ


何億光年も離れた星の望遠鏡から
古代の地球を眺めてる誰か

何億光年も離れた地球の望遠鏡から
古代の星を眺めてる私


私はそこで漂っている
全ての可能性を空へ飛ばしながら

私はここで漂っている
誰かが可能性に気付いてくれるまで



自由詩 私、総勢無限大 Copyright Seia 2011-01-29 05:52:43
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